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2014年12月8日月曜日

その土地はどこへ?





その土地が誰の所有であろうとも

フェロニッケルスラグは永久にそこにとどまり続ける。


以前、一回り以上年上の知り合いに相続の話があった。地方にお住いのお義父さんが亡くなられた時のことで、親族で葬儀を済ませ、その後、相続の話になったそうだ。

「これで、悠々自適じゃないですか?」、と僕。

「いやぁ、兄弟4人だもの、大したことないよ~。ところでね…」

彼の話によると、生前に本人がいろいろと準備していたので、相続の話自体はスムーズだったのだが、困ったのは農地と山林だったいう。彼は僕と同じで、東京近郊に住んでいる。結局は、地元に住んでいるお義兄さんに任せることにしたのだそうだ。

「山林持ってるなんて、なんかいいじゃないですか。」と僕。

「いやぁ、それがすごいところにあってね、人なんか入れないんだよ。」

亡くなられたお義父さんも元々は半勤半農の兼業で、とてもじゃないが、山までは手が回らなかったのだそうだ。地元に住むお義兄さんも勤め人、農地は農協に任せ、山林は保安林にするか、返納するか、そんな感じなのだそうだ。

「先祖代々、子々孫々」

そんなイメージを持っているのは、僕のような者だけかもしれない。

確かに昔は、山林は財産だった。もちろん今も山林で生計を立てている方もいるだろう。だが、機械化の進んだ農業と違って、山林で収入を得るには知識と労力が要る。運が良ければ、タケノコやマツタケ等が採れて季節の臨時収入にはなるかもしれない。しかし日本の大半の山林には、もう昔ほどの財産価値がないのだろう。



ここからはまた、僕の推察だ。

そんな山林に「降ってわいた」儲け話、地権者たちは飛びついたのだろうか。

前回も記述したが、この「土地造成」は彼らが自発的に計画し、資金を用意して行った事業とはとても思えない。「埋めさせてやった」のだ、当然「土地造成」の費用は事業者側が負担し、彼らは何がしかの利益を得ていたと、考えるのが当然だろう。

その利益がどんな形なのか…、その話はまた別の機会にするとして、ひとつ考えたいポイントがある。

それは「フェロニッケルスラグは永久にそこにある」、ということだ。

宮崎県が「有価物」と判定している以上、「土地造成」に使われたフェロニッケルスラグは地権者たちの財産ということになる。

今の地権者もやがて代替わりする。その土地も、いつかは相続になる。フェロニッケルスラグは永久にそこにある。当然、相続者は「フェロニッケルスラグごと」相続しなくてはならない。リスクと共に、それこそ「子々孫々」だ。

話はここに留まらない。

人口減少や過疎化が言われる日本の地方都市で、その一家が代々永久にその場所に住み続け、必ず子孫を作り、相続し続ける保証はどこにもない。いつか手放さざるを得ない時が来る可能性は少なくない。

その時に、フェロニッケルスラグの埋まった土地は転売可能なのだろうか?

現在の「不動産鑑定評価基準」には土壌汚染調査は欠かせない。必ず調査が入るはずだ。その調査で、この土地はどんな評価になるのだろうか?購入者に通知する義務は生じないのだろうか?

「土地造成」された民間の土地は、通常、販売されたり賃貸借されたりする。そこには宅地建物取引業法など、土地利用に関する法律がある。関連法との整合性が取れているのか…、調べてみる必要がありそうだ。


フェロニッケルスラグは永久にそこに留まり続ける。

その土地はどこへいくのだろう。



<おわり>




2014年12月5日金曜日

無過失責任



黒木さんのブログに登場する人物たちは皆どこか不可解だ。

中でも、最も不可解なのは3人の「地権者」だろう。

皆それぞれが、自分の所有する山林にスラグを埋めさせている。

その構造について、少し推察をしてみることにした。



「製錬所のゴミを埋めさせてやっている。」

地権者たちのこの認識は共通しているようにみえる。「○○に頼まれた」「山を提供した」「貢献している」、そんな言葉が印象に残る。

ここで思うことは、彼らの決断が受動的要因、つまり「誰かに言われてやった」ということだ。自分の所有する山林を有効活用しようと思い立ち、自ら事業計画を立て、資金を調達し、その工事を依頼する…、彼ら地権者に、そういった「自分の意思」があったとはとても思えない。

そこには、何がしかの「利益」があって然るべきだ。だが、それだけなのだろうか?地元の有力企業からくる話、「断れば角が立つ」的な地縁圧力が後押しして、「利益」と引き換えに「ゴミを埋めさせた」、そんなネガティブさ、「喜んでやったわけじゃない」感じがする。



「製錬所が安全と言った」「市役所が許可したはず」

こんな話は往々にして無責任だ。「頼まれて、(仕方なく?)埋めさせた」、それが彼らのポジションだ。事業はすべて他人任せ、当然、責任なんかとるわけがない。それどころか、何かあったら自分たちも「だまされた」「被害者だ」ぐらいの心情だろう。

そんな地権者たちに、黒木さんの言葉は響いているのではないか?

彼らだって薄々は感じているだろう、「フェロニッケルスラグは本当に大丈夫なのか…」っていうことを。だから、黒木さんが問い詰める現実に目を背けたいのだ。彼女の言葉は、地縁圧力を言い訳に土地を汚した「彼らの弱さ」を浮き彫りにしているに違いない。

後は「フェロニッケルスラグ安全神話」にすがるしかないだろう。


… ここまでは僕の推察だ。




無過失責任

ところで地権者たちは、自分たちのリスクを理解しているのだろうか?

環境汚染が発覚した場合、汚染対策の費用はその原因となる行為をした者が負担するという、「汚染原因者負担の原則」がある。当然、「原因となる行為をした者」なので、「100%地権者の責任か」という判断はあるものの、内容を承諾をして、利益を得ていれば責任を免れることは難しいだろう。

さらに、環境関連の法律には「無過失責任」が認められている。

通常の損害賠償請求では、その行為が「故意」か「過失」かで責任の度合いが違ってくる。ところがこの「無過失責任」は文字通り、「過失は認めない」ということ、つまり汚染が発覚した時点で、その責任は原因者がすべて負う、ということになる。

その時になって、「わからなかった」「知らなかった」は通用しないのだ。



<おわり>




2014年12月3日水曜日

住民の合意

(国立感染症研究所 村山庁舎 TBS 報道特集 11月29日より)


こんにちは、ボーンズ88です。

今年、西アフリカで猛威をふるっている「エボラ出血熱」。日本でも「感染の疑いのある方」が数名出たことで大変な話題になりましたね。

「ところで、それとスラグ問題、どう関係があるの?」

… ポイントは、そこなんだよね・・・。

そこで、11月29日に放送されたTBS「報道特集」から、内容を一部抜粋して今回の話を進めます。

 → 動画はこちらで。




ご存知の方も多いと思いますが、有効な治療法がなく致死率も高い病原菌等を研究できるBSL4(Bio Safety Level)研究施設は、日本国内では稼働していません。

その理由は「住民が反対している」からです。

「住民の皆さんは、どうして反対しているの…?」

BSL4研究施設である「国立感染症研究所 村山庁舎」は住宅密集地にあります。

(中央に見える白青色の建物が国立感染症研究所 村山庁舎)


この施設が建設されたのはもう30年以上前なのですが、その時に周辺住民に十分な周知がされず、それがBSL4研究施設であることは建設の後から知らされたのだそうです。

「でも、国がやってるから安全なんじゃないの…?」

… そうだといいんだけどね・・・。

福島原発事故以降、こんなこと言いだす人は、「何かの目的でそう言っている」と、思った方がいいくらい、国に対する信頼は失墜しました。特に危機管理については先進国中最低だと言ってもいいと思います。

この施設も計画当時は、「住民には内緒で造って、事故が起きたらみんな死んでね」ぐらいの感覚で進められたものだと思います。「情報隠ぺい」と「泣き寝入りさせる技術」は、日本政府が帝国時代から受け継ぐ「伝統芸」と言っても過言ではありませんね。

そこで住民は署名活動をして、市議会議員が動きました。




そして「住民の合意」が整って、この施設は30年以上稼働していないのです。

今回、エボラ出血熱の対応を迫られた政府は、早速、塩崎厚労相が立地自治体である武蔵村山市へ訪問、藤野市長に「施設の稼働に向けた協議」を打診しました。




「協議はするが、最終的には市民の理解を得ることが大前提だ。」

藤野市長は記者会見でそう語りました。



「ところで、これがスラグ問題と、どう関係があるの…?」

この国立感染症研究所 村山庁舎は、恐らく「国際基準を充分に満たした立派な施設」だと思うのです。何か法的に問題があるとは思えません。

「国としてBSL4研究施設は必要だ。」という人もいます。

「施設は安全だ。」と厚労省や文科相は言うでしょう。

それでも「住民の合意」がないと、施設は稼働できません。

これが「政治的な問題解決」だと思うのです。

「法律的にOK」だからといって、何でもできるわけではありません。

そこには「住民の合意」が必要なのです。



「フェロニッケルスラグの山間埋土」問題。

相手方は「住民の合意」を形成させまいと、いろいろ手を尽くしていますね。

「寝た子を起こすな。」

それが「黒木さんへの裁判」の本質ではないのかな…、

僕にはそう思えます。



<おわり>

【お詫び】
ブログのタイトルを「Dust n' Bones 偽計のスラグ」((前)スラグの偽計)に変更しました。申し訳ありません。急造ゆえ、これからも変更点があるかもしれません。その際はご容赦ください。


2014年12月2日火曜日

Dust n' Bones 偽計のスラグ





こんにちは、ボーンズ88です。

宮崎県日向市に在住する主婦の黒木さんがネット上でその現状を訴えた

「日向製錬所 産業廃棄物問題」

それについて、単独のブログを立ち上げることにしました。

「Dust n' Bones  偽計のスラグ」


ネーミングの由来は意外と安易で、地元の方はフェロニッケルスラグを「ダスト」と呼んでいるらしいことと、僕の「ボーンズ」から、Guns n' Roses の "Dust n' Bones" という曲名を思い出し、それをそのままタイトルにしました。

これにともない、これまで自分のブログ「追憶の骨(bones)」で書いていた、「産業廃棄物と闘うひとりの主婦①~⑥」をこちらに移管しました。



「どうして、わざわざ別のブログにしたの…??」

第一の目的は、この問題に自分なりに関わってみようと思ったからです。

トップの画像を見てください。まさに大量のフェロニッケルスラグが山に埋められています。事業者と行政はこれを「土地造成」だと言っています。

黒木さんは「グリーンサンドはゴミだ」と言っています。

僕にもそう見えます。

これは「スラグのリサイクル」なのか?それとも「産廃の山間埋土」なのか?

不思議に思った僕は、この件いついて少しづつ調べてみることにしました。



スラグのリサイクル

調べ始めてわかった事は、これは金属精錬する際に大量に排出される、有毒性の高い「金属鉱さい」を、最近の技術によって無害化し、製品化して、生産コストを大幅に抑えようとする「大きな流れ」の一環にあるということです。

地方の一企業とその自治体だけで、こそこそやっている話ではありません。企業、業界、地方自治体、国、研究機関などが一体となって取り組んでいる事業なのです。

ところが、その実態はどうでしょうか。画像の場所は、人目に付きにくい山間部です。そこにスラグを埋土しています。これは「リサイクルの名を借りた産業廃棄物の不法投棄」ではないのか。そう思えてならないのです。



僕にできること

しかし、この問題は宮崎県日向市で起こっている事、東京近郊に住んでいる僕にできることは、そう多くはないかもしれません。

ただ僕は、自分なりに、この件について知りたいのです。

そして、理解できた事を少しづつでもいいから発信する。

そのためのブログにしようと思っています。



<おわり>